初めて色になる

音楽、特撮、雑記

こんなにアベフトシに夢中になるなんて思わなかった

2019年7月22日。わたしの敬愛するアベフトシが旅立ってから10年が経った。


わたしは10年前のその日、アベの存在すら知らなかった。確かにミッシェルを見たという記憶は、かの有名なMステtATuドタキャン騒動のときぐらいで、音楽に興味を持ったこともない小学3年生のわたしは「この人たち、かっこいいな。これから有名になるだろうな。」なんて思っていた(失礼……)。
アベが亡くなって3年後の春、友人が勧めてくれたのがきっかけで、YouTubeで「世界の終わり」のMVを見て、アベの演奏に夢中になった。
そんなありふれた出会い方なのに、こんなに夢中になるなんて思わなかった。

わたしが2歳の頃に発売した「世界の終わり」は、邦ロック好き高校生を名乗っていたわたしに大きな衝撃を与えた。
退廃的な世界観、悲しいテーマのはずなのに楽しそうに過ごす「君」、デビュー曲のくせに世界の終わり。何もかもが完璧だった。
そこからの記憶はあんまり無い。色々なMVやライブ映像を漁って、気付けばわたしはアベに夢中になっていた。


あんなに楽しそうにギターを弾く人を初めて見た。
「シャンデリヤ」や「スイミング・ラジオ」の高速カッティングは、痺れるぐらいかっこよかった。
今まで歌詞や歌声にばかり囚われていて、「この曲はこの歌詞がエモいよね」とか語ってた「邦ロック好き」な自分が、アベのギターに殴られた気分だった。
CISCO!!!!!!!!!!」しか歌詞がない「CISCO~想い出のサンフランシスコ(She's gone)」ですら、どうしてあんなにかっこいいのか。
限られたお小遣いとバイト代で、TSUTAYAでCDを借りまくった。中古だけれどDVDも集めた。土日は古本屋を巡って、ミッシェルが載っている音楽雑誌を探し回った。
チバの独特な歌詞や歌声も、ウエノのうねるベースも、キュウちゃんのドラムも大好きだった。四人揃わなければミッシェルじゃなかった。けれどいつだってわたしの耳はアベの音を追っていた。
アベにハマればハマるほど、この世に存在しないという事実がわたしを苦しめた。高3の頃はギターマガジンのアベフトシ特集・通称アベ本を夜な夜な読んで、親が寝静まってからDVDを見て、一人取り残されたような気分を味わっていた。

だれかが、ミッシェル・ガン・エレファントは生き物のようだと言っていた。
獣のように無我夢中で駆け抜けて、生き物が死ぬときみたいにミッシェルは解散した。
本当に邪推だけれど、ラストヘブンツアーのアベの「ありがとう」は、自分が輝ける場所はもう二度と無いんだと思っていたんじゃないかと。でなければ、あんなに泣いてるようなギターの音なんて奏でられない。
アベはミッシェルのギタリストになるために生まれてきたような存在だったんだと思う。ミッシェルのメンバーはアベが現れたとき救世主だって言ってたみたいだけど、アベにとってもミッシェルという居場所があって良かった。
できれば、ずっとずっと続けてほしかったけれど……あそこで終わらなかったら、ミッシェル・ガン・エレファントはこんなにかっこよくなかった。


わたしの人生でアベよりも夢中になれる男なんていない。
取り憑かれたようにギターをかき鳴らして、鬼のようだと称されて、そのくせ笑うとかわいいしファンにもめちゃくちゃ優しい。
ミッシェル解散後はバンドを転々として、広島でペンキ塗りをしていて、吉川晃司と親しくなった矢先に死ぬなんて。どこまで不器用なんだよ。
もっとよぼよぼになって禿げ上がったあんたの姿を見たかった。アベも老けたよね、普通のおじさんになっちゃったよねって言いたかった。かっこいい姿しか見せないまま死ぬなんて、ずるい。チバもウエノもキュウちゃんもおじさんになってるのに、わたしの記憶の中のアベフトシは2003年の頃のままで止まっている。
エルレナンバガもみんな再結成してるよ。でも、アベがいないせいでミッシェルは絶対に二度と再結成できないんだよ。おじいちゃんになったチバの隣でギターを弾くアベの姿を見たかったよ。
アベのいないミッシェルを見るのは、もっともっと嫌だけど。

昨日はずっと、10年前のアベは今頃何していたんだろう、って考えていた。いつもと同じようにギネスを飲んでマルボロを吸ってギターを弾いていたのかな、なんて考え始めたら涙が止まらなくなって、タイムスリップしてこの命をアベにあげられたらどんなに良かっただろう、なんて考えた。そんなことしても喜ばないだろうけど。
まさかアベに出会って7年経った今でも、アベのことを想って号泣するとは思わなかった。一度でいいから、アベのギターを生で感じたかった。
理不尽で胸糞の悪いニュースばかりの世の中を、アベのギターで切り裂いてほしかった。
このやりきれない想いを抱えて生きていけば、いつかアベに会えるだろうか。天国があるとしてそこでアベに会えるなら、人生頑張れる気がするよ。